<腫瘍・感染症薬学>
【教室概要】
当研究室は2023年4月に設けられ、福岡大学薬学部内で最も新しく、がんと感染症の二分野を主要なテーマとして活動しています。
がん薬物療法で用いる薬剤は、古くから使用されている殺細胞性抗がん薬やホルモン療法薬、さらに2000年代以降に登場した分子標的治療薬、さらに近年の免疫チェックポイント阻害薬と着実な進歩を続けています。特に免疫チェックポイント阻害薬が、がん薬物療法における新たな地位を確立した後は、治療が新たなステージとなり、これまで以上に薬物有害事象の複雑化を招き、かつ長期間の施行後管理が必要となる原因となりました。それに伴って、医師だけでのがん薬物療法管理は完全に不可能となり、薬剤師によるがん薬物療法への貢献の必要度が増し、抗がん薬を安全に適切に使用するためには「薬剤師力」が重要となっています。
また感染症の分野でも、感染症治療や病院内の感染制御などの業務において、薬剤師が果たす役割の多様化し、かつその重要性が増していて、今や薬剤師の存在なしに抗菌薬の適正使用や感染制御は成り立たない状況があります。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るった中で明らかになったように、新興感染症パンデミック状況下では、病院薬剤師および地域医療における薬剤師が団結して、その職務を果たすことが重要であり、改めて感染症分野でも「薬剤師力」が必須であると認識されました。
以上のように、薬剤師がこれらふたつの分野において、医薬品に適正に果たす役割は大きく、それら薬物療法に積極的に関わることで医療の進歩にも大きく貢献が出来ると我々は考えています。しかしながら、近年の先鋭的な薬理作用をもつ医薬品の増加は、その適正使用を益々難しくして、さまざまな課題が複雑化となり安易に解決が出来なくなっています。これらの諸問題を克服し、医療の場で安全で有効な医薬品の使用を確保していくためには、薬剤師が様々な展開からの多くの研究を通じて未解決な問題を解明していき、薬物療法を本来持っている力が十分に出せるように貢献していく必要があります。
本研究室では、これからも生じるであろう多くの課題に、多方面からの研究を通じて、医薬品の適正使用を確保するために必要なエビデンスの創出に貢献できるように取り組んでいきます。
腫瘍・感染症薬学研究室
教授 松尾 宏一